中務麗子ピアノリサイタル
「道化師たちの調べ」
2001年11月23日 トッパンホール ライブ録音
ここに登場する道化師は、まずスペインの喜劇のみに登場する特別な道化師役グラチオーゾがアンダルシアとカスチール地方の響きの中に顔を出します。ついで登場する仮面劇の道化師タントリスは、どちらかといえば馬鹿者タントリスというエンターテイナーで、トリスタンとイゾルデの求愛をもじってグロテスクかつ錯乱した狂喜を展開します。一方、ミンストレルと風変わりなラヴィーヌ将軍は喜劇でお馴染みのライトタッチで道化師特有のわざとらしい哀れさを風刺的に演じます。道化師と一口にいってもいろいろなタイプがありそうですが、共通して言えることは、演じている側が真剣に右往左往すればするほど、見ている側は滑稽に感じるということでしょうか。
今回の標題音楽の曲目では、あえて人間のダークな部分、冷笑や狂気を表現した作品にも目を向けました。シェヘラザードは夜の匂いが、ドン・ファンにはエゴイスティックな匂いが漂います。ヴェニスのゴンドラに揺られてから、カンツオーネではダンテの神曲の引用である苦悩の中で過去の幸せにため息をつく節を歌い上げ、後に続くタランテラ、毒蜘蛛タランテラに刺されその毒を取り払うために踊り狂うという狂気に満ちた8分の6拍子のリズムが迫ります。
作曲家の個性を示す様々な道化師たちと共に、皆様の自由な感性で時空間を巡って頂けるようなひとときになることを願っております。
中務麗子
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