メッセージとコンサート評
 

 


中務麗子 ● ピアノ

Message

2009年12月より、入籍にともない、慣れ親しんでいただいた名前、中務麗子を下川(しもかわ)れいこに
改名いたしました。皆様の温かいご支援にお応えできますよう、独自の音楽活動を新たに広げていきたいと願っ
ております。 今後とも、下川れいこ にて、どうぞよろしくお願いいたします。

下川れいこ



雑誌[ショパン]2009年4月号 87ページ
舞台と客席が一体に 
中務麗子ピアノリサイタル (批評:道下京子)
中務麗子うあ、英国王立音楽大学やトリニティー音楽大学などで研鑽を重ね、カナダのヴィクトリア大学で修士課程、そしてブリティッシュ・コロンビア大学の演奏ディプロマ課程を修めている。カナダパシフィックコンクール第2位などの受賞歴を持ち、現在は演奏活動とともに、ミュージックアカデミー東京で講師を務めている。
 当日は、司会には役者、ダンサーとして活躍する深堀絵梨、バリトン・サクスフォンは浅野廣太郎を迎えて、『シェークスピアの嵐と恋』と銘打ったリサイタルが行われた。ベーゼンドルファーの深くて円やか響きを活かしたウィリアム・バード『パバーヌ』、典雅な趣とともに、ゆったりとした歩みで時を重ねていった。ここで、後半の即興演奏のために、聴衆とともに12音列にならって音選びが行われた。その後、ベートーヴェンのソナタ『テンペスト』の演奏が続いた。静と動のコントラストを大胆にとり、メリハリのある音楽を形成した。第1楽章では、アルペッジョを含む第一主題を、あえて響きの混濁を残して、ミステリアスな雰囲気を醸し出していた。第2楽章では流麗さと音の一体感を際立たせて、大きなスケールで音楽を描き出した。休憩後、司会の深堀によって、シェークスピアの『ロメオとジュリエット』の詩が紹介され、中務によってプロコフィエフ『ロメオとジュリエット』作品75(10曲うち9曲)が演奏された。リズムを細やかに扱うことで、力強い躍動感をもたらしており、全体的にユーモアとロマンティクスを見事に融合させた。『モンタギューとキャピュレット家』では、サキソフォンの浅野の憂鬱な表情が演奏に素直に反映し、楽想作りに貢献していた。最後に、『即興12音の探訪』と題して、前半に聴衆によって選ばれた8つの音を、ピアノとサキソフォンのユニット(その名もユニット・シェーンベルガーズ)、がその場で即興演奏した。舞台と客席とが一体となった演奏会で、和やかな雰囲気の中、会は閉じられた。(1月18日王子ホール)

音楽現代 2009年4月号 145ページ
中務麗子ピアノ・リサイタル 
シェークスピアの嵐と恋 (批評:浅岡 弘和)
海外でのユニークな活動で知られる中務麗子がシェークスピアに因んだ作品を集めてリサイタルを開いた。 深堀絵梨の司会とトーク(台本:能見章子)により、前半はまずウィリアム・バード「パバーヌ」。中務はチェンバロも弾くだけあり自家薬籠中の演奏。次は中務と新ユニット、シェーンベルガーズを組むバリトンサックス奏者浅野廣太郎が「モンタギューとキャピュレット」を吹きながら登場。後半で披露する12音音列による即興のため、聴衆にSCHEに続く8音を選択させた。そして深堀による解説に続き、ベートーヴェン・ソナタ第17番ニ短調「テンペスト」がダイナミックに演奏された。
後半は「ロミオとジュリエット」。まず深堀がシェークスピアの序詞を朗読し、プロコフィエフのピアノ版10の商品から「情景」以降の9曲を演奏。もちろん「モンタギュー」では浅野が共演した。最後はユニット・シェーンベルガーズによる即興で、今時珍しい「12音の探訪」。(1月18日王子ホール

ムジカノーヴァ 2009年4月号 91ページ
中務麗子ピアノ・リサイタル?シェークスピアの嵐と恋
(批評:壱岐邦雄)
中務麗子(イギリス王立音大、トリニティ音大、カナダのヴィクトリア大終了)が「シェークスピアの嵐と恋」と題して深堀絵梨(司会・朗読)と浅野廣太郎(バリトン・サックス)とコラボレーションのコンサート。彼女は教育活動(現ミュージックアカデミー東京講師)にも意欲的に取り組んでいるとあって客席には子供連れが多く、リサイタルというよりむしろファミリー・コンサートの雰囲気。
じっさいプログラムには「お客様による12音列の音選び」とそれに基づくユニット・シェーンベルガ?ズ(中務麗子と浅野廣太郎のコラボ)の即興演奏《12音の探訪》や、アンコール曲《ポケモン映画より「オラシオン」》といったものが含まれている。
中務麗子のソロは前半にバードの《パバーヌ》とベートーヴェン《ソナタ第17番「テンペスト」》、後半にプロコフィエフの《ピアノのための10の小品「ロメオとジュリエット」》。
ここにおいてもシェークスピア《テンペスト》の効果音入り朗読があったり、《ロメオとジュリエット》の情景ナレーションとサックスのインプロヴィゼーションが入ったりと、いかにもファミリー向けの感。もっとも中務麗子のピアノそのものはことさらシェークスピアの劇にこだわる風でなくマイルドな美音、強靭なダイナミクスをもってピアニスティックに響かせ真摯に奏でて、本格的な好演。

福本健 『音楽の友』6月号195ページ(2000年3月31日・イシハラホール)
ピアノの中務麗子は、弱音を基調としたユニークな表現でショパンのノクターン2曲、ラヴェルの「鏡」、シューマンの幻想曲を弾いた。
いずれの曲においても、中務はただ堅実に弾こうとするのでなく、自分が感じたこと、楽譜から読み取ったことを自分のことばで表現しており、それが個性的な表現につながっている。ショパンやシューマンでの情熱的かつロマンティックな味わいや、ラベルでの表現の面白さ(技術的には少し甘さを残した)など、十分に魅力的であった。ただ繊細な弱音が使えるはずの人なのに、強音が少し過激になりすぎる傾向にあり、確かにダイナミクスの幅は広いのだが、その以降の音楽的なつながりに若干の疑問を残した。

中務麗子ピアノリサイタル(2001年11月23日、トッパンホール)より
壱岐邦雄 雑誌『ムジカノーヴァ』 2002年4月号より抜粋
明快なピアニズム。どの音の、どんなシーンもくっきりと響かせ、描く。ラヴェルは高音が煌いて強靭。シマノフスキ《仮面劇》の“シェエラザード”のエキゾティシズムは、モダーンな様相を強め、ラヴェルとの親近性を増して響く。リストでは、骨太なフレージングでゆったりと「カンツォーネ」を歌い「タランテラ」では轟音をうならせる。このあたり、ベルマンを彷彿とさせたりして当夜一の快演であった。

荻谷由喜子 『音楽現代』1月号(2001年11月23日トッパンホール)

中務麗子は英国王立音楽大学卒業後、英国のふたつの大学院も卒業し、現在カナダ・ブリティッシュコロンビア大学博士課程に在籍中。今回は「道化師たちの調べ」をテーマに、ラヴェル、シマノフスキ、ドビュッシーの作品から道化師に因むピースとリスト「ヴェネチアとナポリ」の3曲が演奏された。笑いと涙をにじませた道化師の世界から一歩踏み込み、人間の苦悩や狂気にまでテーマを広げているのも興味深い。

前半はラヴェル「鏡」から、第1、第3、第4曲とシマノフフスキ「仮面劇」の3曲。最初の硬さは次第にほぐれ、シマノフスキでは人間の内面に独特な角度で切り込む作曲家の意図によく迫った。
休憩後はドビュッシー「前奏曲集」より「パックの踊り」「ミンストレル」「風変わりなラヴィーヌ将軍」。やや、過剰な表現も聴かれたがキャラクターのひき分けは成功。リストはさまざまなタッチを自在に駆使した好演。ことに終曲「タランテラ」はリズムも崩れず最後まで面白く聴かせた。

ヤマハ音楽支援制度2001年度対象者 中務麗子さんがピアノリサイタルを開催
ymf YAMAHA MUSIC FOUNDATION NO.24 「ymf」第24号 Jan 2002 p.11

本誌19号で授与式の模様を紹介した「ヤマハ音楽支援制度・音楽活動支援」の対象者・中務麗子さんが、昨年11月23日に東京・トッパンホールでピアノリサイタルを行った。
英国王立大学で音楽学士号(B.Mus)修得後、ギルドホール音楽演劇学校大学院伴奏科を卒業し、現在カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学音楽学部の博士課程(DMA)に在籍中の中務さんは、ワットフォード音楽祭でモーツアルトのピアノ協奏曲第17番を演奏し、コンチェルト部門1位を受賞するなど、国内外で独奏者及び室内楽奏者として意欲的な活動を続けている。

今回の「道化師たちの調べ」と題されたリサイタルでは、ラヴェルの「鏡」からの3曲を皮きりに、シマノフスキの「仮面劇」、ドビュッシーの「前奏曲集」より3曲、リストの「ヴェネチアとナポリ」というユニークなプログラムを披露。持ち前の表現力と音楽性で作曲家が独自の個性を刻み込んださまざまな道化師たちの姿を浮き彫りにし、「ヴェネチアとナポリ」の第3曲「タランテラ」では、その圧倒的なテクニックで満場の聴衆に深い感銘を与えた。

診療内科医・医学人類学者・医学博士  辻内 琢也
天性の激情、情念の渦に翻弄されていたひとりのピアニストは、不思議な出会いに導かれて大自然カナダの地にたどり着いた。深い真摯な道を探求し続ける音楽の求道者達との出会いは、彼女を洋の東西を越えた瞑想的世界へといざない、調和の取れた静謐な瞬間を体験させたようだ。「静中の動、動中の静」、絶え間ない呼吸の波には雑念の入る余地が感じられない。
情念の世界を越えて、さらに深淵な魂の世界の入り口に立った若きピアニストの21世紀に期待したい。

CD評:
百瀬喬 雑誌『ムジカノーヴァ』 2003年3月号31ページ
中務麗子ピアノ・リサイタル「道化師たちの調べ」中務麗子は英国音楽院などに学んだ後に、カナダのヴィクトリア大学、ブリティッシュ・コロンビア大学で研鑚を重ね、昨年2月の第8回パシフィック・ピアノコンクールで第2位に輝いた若手女流。このアルバムは、2001年11月にトッパンホールで行われたリサイタルのライブ録音という。研ぎすまされた感性と、鮮やかなタッチのピアニズムの持ち主で、いずれの曲もよく彫琢されており、また表情も豊か。ラヴェルの「道化師の朝の歌」などはとても若手とは思えないほどに表情をよく捉えている。
雑誌ショパン2003年5月号 30ページ 新鋭ピアニスト ロナン・マギル氏推薦にて掲載

2004年 5月9日 京都 青山音楽記念館バロックザール 
ピアノとチェンバロのマチネ 中務麗子リサイタル 音楽の友7月号p.205 日下部吉彦
個性的で、自分の音楽を持っている。海外への留学や、かの地での演奏活動から培われた資質だろう。そのことは、とても貴重だが、ときによっては首をかしげさせることにもなる。モーツァルトのソナタK457は、かなり思い切ったもので、アダージョでのアゴーギグをたっぷりとるなど、ベートーベン風ともいえるほどに重い表現だった。ショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」の前半は、とても美しかった。音色もきれいだし、歌心もたっぷり。ただし、後半のポロネーズは、テンポとリズムをもう少し厳格に取った方がいいのではないか。アルベニスの「スペインの歌」も好演だったが、欲をいえば、情熱の裏側にある陰影の部分がほしかった。冒頭で、ソレルのソナタをチェンバロで弾いたが、チェンバロ音楽としては、やや未消化か。(5月9日・青山音楽記念館バロックザール)

「清澄な響き 中務麗子 チェンバロ&ピアノリサイタル」 
 酒井忠政
 ショパン8月号 p.107
冒頭はチェンバロで、ソレルのソナタ4曲が弾かれた。1曲目は、5月のそよ風を思わせるコンサートの爽やかな雰囲気をかもし出し、4曲目は若々しい躍動感を見せた。次のアルベニス「スペインの歌」作品232は、中務なりによく弾きこんでいたが、そこに熱っぽいスペインの血に、もっと踏み込んだものがあれば、なお良かったであろう。モーツァルトの幻想曲K475とソナタK457では達者に、中務のしっかりした主張が見られた。ただ、古典様式やアナリーゼなどの配慮があれば、一層完成度が増すように思えた。ショパン「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」作品22では、中務の特質が充分に発揮されており、特にポロネーズでは、超絶的なテクニックもそれと気づかせないほどによく弾きこまれていた。この曲のアイディアは、メンデルスゾーンの「ロンド・カプリチオーソ」作品14にあることも少し思い浮かべれば、「アンダンテ・スピアナート」の部分をより神秘的に奏でられたであろう。(5月9日 青山音楽記念館)

「中務麗子ピアノリサイタル チェンバロとピアノによるマチネ」
 中原昭哉 ムジカノーバ8月号 p.93
5月9日、京都・バロックザールで行われた中務麗子リサイタルは、前半、ソレルのチェンバロ・ソナタ(曲順は緩・急・緩・急と組み合わされた)≪第47番≫、≪第43番≫、≪第49番≫、≪第48番≫で始まる。演奏全体を通して、奏者の強く張り詰めたタッチがチェンバロの音をピアノの鍵盤の音のように印象づけた。このあと、ピアノ演奏に転じ、最初のアルベニス≪スペインの歌≫作品232で、第3曲<やしの木陰>が最もスペイン風な味わいをもたらした。休憩後、演奏されたモーツァルト≪幻想曲≫K475&≪ソナタ≫K457を聴くうちに奏者特有のフレーズの区切りがみられ、そのフレーズの区切り方が奏者の表現語法かどうは別にして、曲の流れに不自然さをもたらした。多彩なプログラムで構成された中務の意欲的なリサイタル、そのフィナーレを飾るショパン≪アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ≫作品22では、惜しくも冒頭からミスが目立ち、リサイタルの楽曲の構成の難しさを感じさせた。


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